アキカン

１９８７年、坂本龍一のラジオ番組で『デモテープ大賞』を受賞し、ミディレコードからデビューした、詩人、尾上文と、サウンドクリエーター、今井忍のポエトリーリーディングミュージックユニット『ボーイ・ミーツ・ガール』の3rd CD『ボーイ・ミーツ・ガール３』１９９０年に初収。２０００年、『ボーイ・ミーツ・ガール』ベストアルバム『All Story Music』に再収録。

“アキカン”

ねえ　さよならなんて言わずにバイバイ　そう言やあよかったな
そうすりゃ俺たち別れることもなかったかもしれない
言葉なんか信じない　そう言い合ってたくせに
いっつも言葉ですれちがってた俺たちさ

からっぽな頭　アキカンみたいに蹴っ飛ばしながら
なんだか変な気分さ　もう会えないなんてな
ホームドラマみたいな街の幕間みたいな夕暮れ
顔が見えない分、余計　「さよなら」は響いた

これはフィクション　それともノンフィクション

一日一回　君の声を聴かずにいられない
そんなアッツイ時もあったっけ
「すぐに恋人できるよ」そういう君の言葉
喜んでいいやら悲しんでいいやら

これはフィクション　それともノンフィクション
これはフィクション　それともノンフィクション

セックスも嫉妬もだんだん減った
おもいやりと微笑みがどんどん増えた

ねえ　憎しみあって傷つけあって終わる恋がいいな
好きも嫌いもなくなって終わるよりましさ
ふっと笑いが消えると他人同士になったっけ
沈黙を満たす愛がもうなかったんだな

これはフィクション　それともノンフィクション

昨日　夢で君を見たんだぜ
酔いつぶれて眠ったベッドの中でさ
冬枯れたグラウンドに君は立ってた
振り向く君の顔を僕はずっと忘れない