【朗読】「二人の幼き子」俗世とはどんなところだろう? 女人とはどんな生き物だろう?【時代小説・歴史小説/谷崎潤一郎】
[音楽] 今回は谷崎純一郎の2人の幼き子を朗読し ます [音楽] 2人の事後は2つ違いの13に15であっ たのは丸年下の方は丸と呼ばれてい た2人は同じようにまだガゼない自分から 女人金税の悲の山に預けられてと異商人の 膝元で育てられ た千寿丸は大江の国の長者の家に生まれた のだそうであるがある事情があってこの 宿房へ連れてこられたのは4つの年のこと であ 瑠璃コマはそれがしの正言の若気であり ながらやはり何かの主催があってよよ目の の父を離れかけた3つの年に都を捨てて 王城ちごの令嬢に託せられたので ある2人はもちろんそういう話を誰からと もなく聞かされてはいるものの自分たちに 明瞭な記憶があるのでもなく 確かな証拠があるというわけでも ない自分たちには父もなく母もなくただ これまでに賛成して養のくだされた商人を 親と頼み仏の道に心志すより他はないと 思ってい たお前たちはよくよく幸せな身の上だと 思わなければなりませぬ ぞ人間が親を恋しとったり故郷に憧れたり するのは皆浅ましい煩悩の所業であるのに 山より他の世間を見ず親も持たないお前 たちは煩悩の苦しみを知らずに生きてこ られたの だとおりより商人からさされるにつけても 2人は自分たちの境遇のありがたさを感謝 せずにはいられなかっ た商人のような高徳のひりでさえこの山へ 逃げてこられる以前にはありとあらゆる 浮世の煩悩に苦しめられてその絆を 断ち切るまでに長い間の官業を積まれたの だそうで あるまして商人のお弟子の中には朝いう 教門の公爵を聞きながら未だに煩悩を 絶やすことができないを嘆いているものが 大勢あると いう2人は世の中を知らないおかげでそれ ほど恐ろしい煩悩という悪病にかからずに 住んでしまうので ある煩悩を滅せばやがて母の家を称する ことができるというその煩悩を初めから脱 している自分たちは近いうちに曲げを 剃り落として立を受けたなら必ず死のぼに も劣らぬような尊い出家になれるであろう とそれを楽しみに日を送ってい たけれども2人は子供らしい無邪気な好奇 心から煩悩の苦しみとやらに満ちている浮 よというものがどんないしい国土であるか そこに住みたいとは願わぬまでもそれに ついて色々の想像を巡らしてみることは あっ た商人を始め多くの線たちの話によれば この汚らわしい世の中で西方上土のおかを わずかに伝えているところは自分たちの いる山だけだそうで ある山の麓から四方へ広がって青空の雲に 続いているあの広い広い 大地あの大地こそは教門のうちにまざまざ と描かれている五力の世界であると いう2人は指名がだけのいきから互いに 自分の故郷だと聞かされている法学を 見下ろしてはたいのない夢のような空想を 浮かべずにはいられなかっ たある時千寿丸は大の国を眺めあっで薄紫 の霞の底に輝いている仁の海を指さし ながらねえルリコ丸あそこが浮だと言う けれどもそなたはあそこをどんな土地だと 思っていると兄分らしいませた口調でもう 1人の事後に行っ たふきはちり誇りにまみれた嫌なところだ と聞いているがここから見るとあの湖の水 の表は鏡のように住んで いるそなたの目にはそう見えないだろう か瑠璃コマはそんな愚かな質問をして年上 の共に笑われはせぬかとあむように 恐る恐る言っ ただがあの美しい水の底には恐ろしい竜神 が住んでいるし湖の節にある三神山という ところにはその竜よりももっと大きいムが 住んでいることをそなたは多分知らないの だろう山の上から眺めると浮は綺麗に 見えるけれども降りていったらそれこそ 油断のならぬ土地だと商人がおっしゃった のはきっと本当に違い ないこう言って千住丸は口元に履行そうな 笑を漏らし たある時はルコがはかな都の空を望んで絵 を広げたような平原に延々とつっている 王城のイかを指し示し ながらねえ 千寿丸あそこも浮きよに違いないがあそこ にはこの寺の薬動や大行動にも劣らない 立派な老学がありそうに見えるではない かそなたはあの人家を何だと思う と不審らしく眉を潜め たあそこには日本国を白示す皇帝の5点が ある浮のうちではあそこが一番清く尊い 住まいなのだしかし人間があの御殿に すまえような従前の大いに生まれるには 前世にそれだけのくを積まなければなら ないのだだから我々はやっぱりこの山で 修行を 根性にできるだけの全を植えておかなけれ ばなるまい ぞこう言って千住丸は年下の子を励ま ただが励ます方も励まされる方もこれだけ の問答では容易に好奇心を満足させるわけ にはいかなかっ た商人のせに従えば浮は幻に過ぎないと いう山の上から眺めた景色がたい美しそう に見えてもちょうど水の表に移っている月 の光のようなもので影に等しく泡に等しい ものであると いうあの小の雲を見るが良い遠くから 眺めると雪のように正常で銀のように キラキラと輝いているがあのも雲の中へ 入ってみると雪でもなく銀でもなくももと した霧ばかりで あるお前たちはこの山の谷底から 湧き上がる雲の中に包まれた覚えが あろう浮はその雲と同じこと だこう言って説明されるとなるほどそれで 分かったような気はするがやはりなんと なく物足りなかっ た2人が分けても物足りなく感じたのは 浮世に住んでいる人間の一種で全ての災い の源とされている女人という生き物を見た ことのないことであっ たマロがこの山へ登ったのは3つの年で あったそうだがそなたは4つになるまで 在家にいたというではないかそんなら少し はウの様子を覚えていても良さそうなもの だ他のお女人はとにかくとして母者人の姿 なりと頭に残ってはいないかしら んまろは時々母邪人のおかを思い出そうと 勤めてみるがもちで思い出せそうになり ながら薄いとりに隔てられているようで じれたい心地がする マの頭にぼんやり残っているものは 生暖かい懐に垂れていた乳ぶさの舌触りと 甘ったるい父の香りばかり だ4人の胸には男の体に備わっていない ふっくらと膨らんだ豊かな乳さがあること だけは確か らしいただそれだけがおりおり思い出さ れるけれどもそれから先は まるきり想像の及ばない咲の世の出来事の ようにぼやけて いる夜になると商人のお次の部屋に枕を 並べて眠る2人はこんな具合にひそひそ話 をするのであっ た女人は悪魔だというのにそんな優しい乳 さがあるのは不思議ではない かこう言って瑠璃丸が怪し なるほどそうだ悪魔にあんな柔らかい乳さ があるわけはないと自分の記憶を疑うよう に千寿丸も首を かしげる2人は幼い頃から習い覚えた教文 によって女人というものがいかに道悪な 動物であるかをよく知っているはずであっ たしかし女人がいかなる手段でいかなる 性質の害毒を流すものであるかはほとんど 推量することができなかっ た女人は最も悪なをなすこと一ない爆WH して人を引いて左門にいるという右天王教 の文句だの剣を取りて敵に向かうはなお 勝つべし如人を損なうは金べ 片しというドの文句から察すれば女人は 男子を高手にいましめて恐ろしいところへ 引きずっていく盗賊のようにも考えられ たけれどもまた女人は大魔王なりよく一歳 の人を食うと半に解かれた言葉に従えば虎 やよりさらにな怪獣のようでもあっ た一度女人を見ればよく目の黒くを 失うたえ大蛇を見るといえども女人おば 見るべからずと宝石教に書いてあるのが 本当であるとしたら山奥に住む上のように あの体からどけを吹き出す爬虫類でもある らしかった 千寿丸とルリコ丸とは様々の教文の中から 女人に関する新しい記事を探してきては それを互いに披露し合って意見を戦わます のであっ たそなたもマロもその恐ろしい女人を母に 持って一度は膝にかきいかれたこともある のにこうして今日までつがなく育ってき たそれを思うと女人は猛獣や大蛇のように 人を食い殺したりどけを吐いたりするもの ではない だろう女人は地獄の使いなりと有識論に 書いてあるから猛獣や大蛇よりももっと 凄まじい行走を備えているの だろう我々が女人に殺されなかったのは よほど運が良かったのだだがと千寿丸は 相手の言葉を遮って言っ たそなたは有識論のその先の方にある文句 を知っている か女人地獄士溶断 無主下面自殺内心 にやしこう書いてあるところを見るとたい 心はやしのようでも表は美しいに違いない その証拠にはこの間からにきたアが うっとりとマロの顔を眺めて子のように 愛らしい地だと独り言を言うたぞ やまろも千たちの方々からそなたはまるで 名子のようだと度々からかわれた覚えが あるマロの姿が悪魔に似ているのかと思う と恐ろしくなって泣き出したことさえある が何も泣くには及ばないそなたの顔が菩薩 のように美しいということだと慰めてくれ た人があっ たマロは未だに褒められたのやらそられた のやら分からずに いるこうして話し合えば話し合うほど ますます女人の正体は2人の理解を超えて しまうのであっ た大史結界の上とは言いながらこの山の中 にも毒ある蛇やたましい獣は住んで いる春になればうぐいすが泣いて花が ほろび冬になれば草が枯れて雪が降るのは 浮と少しも変わりが ないただ異なっているのは女人というもの が1人もいないことだけで あるそれほど仏に嫌われているがどうして 菩薩に似ているの だろうそれほど要望の美しい女人がどうし て大蛇よりも恐ろしいの だろう吹きが幻であるとしたら女人も きっと美しい幻なの だ幻なればこそポンプはそれに迷わされる のだちろ美山をゆく旅人がさぎりの中に 迷うように 色々考え抜いた末に2人はこういう判断に 到達し た美しい 幻美しい 虚無それが女人というものであると嫌でも 王でも決めてしまわなければ2人の理性は どうしても満足を得られなかった 年下の瑠璃コマの好奇心はあかも幼子が話 の楽園を慕うような淡い気まぐれなもので あった が年上の千寿丸の胸にわかまっているもの は好奇心という言葉では表せないほどに 強かっ たよよな彼と向い合ってすやすやと熟睡 するルリコマの無な顔を眺めては自分 ばかりが何ゆえこうまで頭を悩ますので あろうと彼は人の無邪気さを羨まずにはい られなかっ たそうしてたまたま目をつればまぶのうち に主ざたな女人のおかがありありと浮かん でよもすがら彼の眠りを騒が せるある時は32層を足するの姿となって シゴの光の中に彼を包容するかと見 たりある時はア地獄の極brotherの 層を減じて18本の角の先から燃え上がる 炎の下で切なに彼を焼き殺すかと見たり するそして悪夢にうされてびっしょりと 冷汗をかき瑠璃子丸に呼び覚まされて人の 上に飛び起きることなども あるそなたは今し方妙な上元を口ばして 唸っていたなんぞ物のけにでも襲われたの かこう言って尋ねられると千住丸は 恥ずかしそうにうじをたれ てまろは女人の幻に責められたの だと声をふわせて答えるので ある日を経るままにだんだん子供らしい 快活と単純とが千寿丸の素振りや表情から 失われていっ た暇さえあれば彼はこっそりルリコ丸の目 を盗んで大行動の内人に佇みながら漢音や 弥勒菩薩のエやな損よに夢見るような瞳を 凝らしつつ呆然と物思いにふけっていた そういう檻に彼の頭をいっぱいにうめて いるものは唯識論の下面ジボさの一区で あっ た内心はやしに等しいにもせよまたその姿 は幻にすぎないにも せよこの山のあたの同等にわしますしぼ薩 のような人間が世の中に生きているとし たら どんなに鍛錬などんなに総合なもので あろうこう考えると女人に対する恐怖の念 はいつの間にか消滅して後に残るのは 怪しい憧れ心地であっ た薬師堂北家道怪談員三納 院彼は至るとの道を彷徨ってそこにアチし てある本尊だの和地だの美感を費用する 天人の群像だのを開かずに眺め入りながら うとうとと火を送っ たもうこの頃では年下の子を相手にして 女人の噂などを語り合おうともしなかっ た女人の虹を口にするのが丸には何でも ないことのように思われるのに彼には 不思議に罪の深い悪字であるように感ぜ られてき た自分はなぜルリコまのような無邪気な 態度で女人の問題を扱おうとしないの だろう目には尊い見仏の像を拝みながら なぜ心には浅ましい女人の影が浮かぶの だろう ひょっとしたらこれが煩悩というものでは ない かしらそう気がつくと彼は身の毛のよだつ ような心地がし た山の上には煩悩の種がないという商人の お言葉を頼みにしてはいるものの自分は いつしか煩悩の鳥子となっているのでは あるまい かいそのこと彼は日頃の今中のモダを商人 に打ち明けてみようかとも思ったが たやすく人に打ち明けてはなるまいと絶え ず耳元でさく声が聞こえてい たそのもは苦しいと同時に甘かっ たただなんとなく大切にしまっておきたい ようなものであった 千住丸が16になり瑠璃子丸が1になった 年の春であっ た等等を巡る5つの谷には山桜が咲き乱れ て四十六棒を包む青葉若に本章の響きが 蒸されるようなうしいもい容気が続い たある日の明け方2人は商人のせを受けて 横川の女の元へ使いにやられた帰り道に 人通りの稀な杉の小陰に腰を下ろして しばらく疲れを休めてい た千住丸はおりより深いため息をつき ながら卒谷の底から立ち上る朝の小の雲に 流れていく様を一心に見つめていたが ふとそなたはさぞ近頃のマロの様子を不審 に思ってやる だろうこう言ってニともせずに年少の友の 方を振り返っ たまろはそなたと幸夫の話をし合ってから 女人のことが気にかかってあけくれこの世 に悩んで いるまろは夢夢女人に会いたいと思うので はないけれど恥ずかしいことには如来の存 の前にづいていくら祈願を凝らしても4人 のおかが目の先にちらついて片時も仏を 念ずる暇が ないなんという呆れ果てた人間になったの だろう瑠璃子は驚いて千住の頬から 流れ落ちる涙を見 た泣いているからには千住は定めし真面目 なのであろう それにしても女人の問題がどうして彼に これほどの問を与えるのかその理由が 瑠璃子には分からなかっ たそなたはまだ出京するのに12年間が あるがマロは今年特するのだと商人が おっしゃっていらしただがこのいしい根性 が治らぬうちは母の道へ心ざしたとて何の 甲が あろうたい6ハ蜜を収支5階を守っても頭 の中の妄想が後の触りとなってマロは英語 に輪廻の世界から逃れることはできない だろうなるほど女人は虚空にかかる虹の ような仮の幻であるかもしれ ないしかし我々のような愚かなプが虹幻と 悟るのにはありがたい説教を聞くよりも 一層雲の中へ入ってみた方が容易に点が 行くもの だそれゆえマロは出血をする前にいっぺん そっと山を下って女人というものを見て こようと決心し たそうしたらきっと幻の意味が分かって そんなことをして商人に叱られはしない だろうか [音楽] [音楽] [音楽] 迷いの雲を打ち払うために女人の正体を 極めに行くという千住の決心はいかにも いじらしいけれども瑠璃子にはたった1人 の友を恐ろしい浮へ離してやるのが心々 なく感ぜられ たビの湖の竜神だの山のムたのが出てき たらどうする気だろう か女人に手足を縛られて真っ暗な穴ぐらへ 引き込まれはしないだろう か毎日生きて帰ってきて もわしが許すまで山を降りてはなりません と厳しくいましめられた商人の掟を破って 再び山に住むことができるだろうか には無数の役なが待ち構えていることは もちろん覚悟しているのだ猛獣の牙に かかり盗賊の刃に脅かされるのも仏法修行 の1つではない か謝って命を落としてもこうして煩悩に 苦しめられているよりはましではない かそれに千だちの話では都はここから わずかに2里の道のりで朝早く山を下れば 昼少し過ぎには帰って来られると聞いて いる都へ行くのが遠ければ麓の坂本の宿へ 降りても女人を見ることはできるそう なたった半日商人の目をかめればマロの 望みは遂げられるの だよしや後になって露見しても悟りの道の 妨げになる疑惑を晴らすことができたら 必ず商人も喜んでくださるに決まって いるそなたが暗示てくれるのは片づけない がどうぞ止めずにおいて くれマロの決心は硬いの だ千住はきっぱりと言いきって足元に開け ている琵琶の皆の赤月の霧の中を滑るよう に登っていく日輪を眺め ながら幸い今日はまたとない良い寄りだ これから出かければ羊の国には帰ってこ られる無事で戻ったらこよいはそなたに 珍しい浮よの話を語ってしんぜよう それを楽しみに待っているが よいと瑠璃子の肩へ手をかけて なだめすかすようにし たそなたが行くならマロも一緒に連れて 行って くれ言って今度はルコが泣い た筒がなく帰ってこられれば良いがたえ 半日の旅にもせよそなたの身にもしもの ことがあったらいつの世に再び会える だろう命を捨てても厭わないというそなた と今ここで別れるような不人情な真似は でき ないまして商人にそなたの行方を尋ねられ たらまろは何と言って答えたら良いだろう か どうせ叱られるくらいならそなたと一緒に 山を出てみたいそなたのために修行になる ならマロのためにも修行になるに決まって いるいやいや 妄想の闇に閉ざされたマロの心とそなたの 胸のうちとは雪と住ほどに違って いる上張りのように清いそなたはわざわざ 危険を犯して修行をするには及ばないのだ そなたの体に間違いがあったらそれこそ まろは商人へ申し訳がないではない か面白いところへ出かけるのならそなたを 捨てて生きはし ない幸夫はどんなに嫌らしいものすごい 土地なのか運よく命を全通して帰ってき たらマロの迷いの夢も覚めてきっとそなた に詳しい話をして聞かすことができる だろうそうすればそなたは自分で浮よを 見るまでもなく幻の意味が分かるように なるのだだから大人しく待っているが よいもし商人がお尋ねになったら山道に 踏み迷ってマロの姿を見失ったと言って おいて くれそれでも千住は名残り押しそうに 瑠璃子のそばへよって長い間ほりをした 物心がついてから1度も離れた試しのない 友と大和にちょいとでも分かれるのが辛い ようでもありいさましいようでもあっ た彼の感情は初めて戦場へ出る子息の興奮 によく似てい た実際死ぬかもしれないという懸念と甲を 立てて凱旋したらという希望とが小さな胸 に渦を た2日経っても3日経っても千住は帰って こなかっ た谷家でも落ちて死んだのではあるまいか と同宿の人々が発砲へ手分けをして山中を 残らず探し回っても彼の姿は見えなかっ た商人様私は悪いことをいたしました先日 私は商人様へ嘘を申したのでござい ますこう言って瑠璃コ丸が商人の前に手を 使えて生まれて始めて不毛誤解を犯した ことを残したのは千住がいなくなってから 10日ほど過ぎた後であっ た横川から帰る道千殿を見失ったと申した のは嘘でござい ます千住殿はもうこの山にはおりませ んたい人に頼まれたとはいえ心にもない 偽りを申したのは私が悪うございました どうぞお許しくださり ませなぜ私はあの時に千住殿を止めなかっ たのでござい ましょうそう言いながら瑠璃子丸は畳へ ひれ伏して悔し泣きに身をもえ た自分が兄とも頼んでいた千寿丸は今頃 どこをうろついている だろういかなる野の草にいね梅雨に濡れて いる だろう半日のうちに戻ってくるとあれほど 固く言い残した言葉を思えばきっと何か 返事があったにそうい ないこのの上はいたずらに産内を捜索する より浮をくなく調べてもらい たいそうして幸いに生きならえていたら 一刻も早く救い出してもらい たい瑠璃光丸はそう決心して叱られること を覚悟しながら千住が山を降りた同機を 包まず商人に白場したのであっ た一旦浮へ出ていったからには大会の中へ 石こを投げたも 同然千住の体はもうどうなったか分かり ませ ん商人は少年に対して異言を示すために こさ目をつぶって息を吸い込むようにして 考え深い口調で言っ たそれにしても お前は妄想に迷わされずによく山に残って い た年はしでもお前と千住とは幼い自分から 既婚が違ってい たさすがに地というものは争われ ない千寿丸は百勝上がりの長者のせがれ 瑠璃子丸はやごない天井人の種で ある血というものは争われないという文句 は2人の気量や品格が比較される旅ごとに 以前からしばしば人の口の派に登って 瑠璃子の耳にも響いていたがそれを商人 から聞かされるのは今日が初めてであっ た欲しいままに起手を破ってを抜け出ると は憎いやだがそんな愚かな真似をしたバで 浮きを見ているだろうと思うと不憫にも 感ぜ られる今頃は犬に食われたか即にさわれた かおそらく無事で生きては いまいもうこの世にはいないものと諦めて 冥を祈やると しようそれにつけてもお前は決して煩悩を 起こしてはなりませぬ ぞ千寿丸が良い見せしめ だこう言って商人は利発らしいクリクリと した瑠璃子の目の玉を覗きながらなんと いう賢い子だろうと言わぬばかりにその 背筋を撫でてやっ た毎晩瑠璃子はたった1人で商人のお次の 部屋に寝なければならなくなっ た別れる時にでは時帰ってくると言い捨て て人目にかからぬようにわざとゆきの 寂しいくるそば道を痩の方へたどっていっ た千寿丸の後ろ姿が 彼の夢の中で小さく小さく遠くへ消え た今になって考えればミスミ命を落とす ことに決まっていたものを無理にも断念さ せなかったのは自分にも罪があるような気 がするけれどもあの売り自分が一緒に行っ たらどんな災いが待っていただろうと思う と彼は己れの幸運を祝福せずにはいられ なかっ これというのも自分には見仏の明子が 加わっていたの だ自分はあくまでも商人の大勢を守り行成 高徳のひりになって必ず千寿丸の母体を とって やろうそう繰り返して瑠璃子は心に誓っ た果たして自分が人から褒められたほどの 鋭い既婚を備えているならいかなる何業 苦行にも絶えてついには信女北海の断りを 悟り妙覚のくいを称することができるに 違い ないこう思うだけでもけなげな彼の頭の中 には信仰の火が燃え上がるように感ぜられ た やがてその年の秋が来 た千住が山を下ってからすでに半年の月日 が過ぎ た満山のセミしぐれが裏がしひぐらしの声 に変わりやがて森の小がそろそろ黄み始め た自分で ある瑠璃子丸はある日夕べの本業を終わっ てもじの前の石段を宿院の方へ降りてく と もしもしあなた様は瑠璃コマ様と おっしゃいます かこういって辺りをはかるように石段の上 から小声で呼びかけるものがあっ た私は山代の国の深草の里から有地の使い であなた様をお尋ね申してまいりました このフを私からあなた様へ直々にお渡しに 言っておるのでござい ます男は門の影に身を隠して多元の裏に 忍ばせてあるフの端を何か曰がありそうに ちらりと示しながらしりにペコペコお辞儀 をして瑠璃子を差しまね たこう申しただけではお分かりになります まが詳しいわけはこれにしめてございます このフをなるべく一目にかからぬように ご覧に入れて是非ご返事を伺ってまれと いうあの申し付けでござい ます瑠璃子は癒し木の風俗をした二十歳 ありの薄髭のある男の顔をうさんらしく 見守っていたが何心なく受け取ったフの表 に目を落とすとおお千住殿の手だと我を 忘れて叫ばずにはいられなかっ たそのかん高い調子を男は制するようにし て言葉を続けた作用でございますよく覚え ていてくださいましたそのフの主はあなた 様と仲良しであった千寿丸様今の私のアチ でござい ます今年の春山を降りるとほどなく 恐ろしい一会にさわれて長い間痛ましい 思いをなさいましたが未だにご運がつき なかったのでございましょうちょうど2月 ばかり前に不の長者のもへ下男に売られた のが縁となってあの優しい未形を長者の娘 に認められて今ではその家の向こになり何 不足ない羨ましいごご身分におなりなさい まし たついてはいやのお約束通り浮きの様子を あなた様へお知らせ申したくこのフを自賛 いたしたのでござい ます浮は決して山の上で考えていたような 幻でもなく恐ろしいところでも ない女人というものは猛獣や大蛇などに似 ても似つかないやいの花よりもきらびやか で見仏のように情け深いものだということ がごごと書いてあるはずでございます 千寿丸様は長者の娘ばかりか多くの女人に 恋慕われて明は神崎今日は上島江口という ように少々ほぼを受かれ歩いて25菩薩 よりもうしい遊びの群れにかしづかれ ながら春の野山を狂いとぶ町長のような 楽しい月日を送っておいでになるので ござい ますかほどに面白い浮知らずに詫びしく 暮らしておいでになるあなた様のおの上を 考えると沖の毒でなりませんのでなろう ことならそっと深の里へお迎え申して昔の よみにこの幸せを開けてあげたいとかよに 主人は申しており ます私がお見受け申してもあなた様は 千寿丸様にもまさった美しい愛らしい落ち でいらっしゃるのにこういう山の中でお 果てなさるのはあまりもったいのござい ますあなた様のようなお立派なごき料のお 方が世の中へおいでになったらどんなに 人々から持てはやされ愛しがられるで ござい ましょうまあ私の申すことが嘘か誠かその 不味をご覧なすてくださいましそうして 是非私と一緒に深さへおいでください 私はこれから大美の国の片の裏へ打越て 明日の明け方には再びここへ戻ってまいり ますそれまでの間によくよく分別をなすっ て決心がおつきになったら誰にも認められ ないようにこの龍門の下で私を待って いらっしゃい まし必ず必ず悪いようにはいたしません もしあなた様をお連れ戻すことができたら 主人はとれほど喜ぶでござい ましょうこういってニコニコ笑っている男 の風景が瑠璃子にはわけもなく恐ろしかっ た半年ぶりで思いもかけぬ友の消息を得た 嬉しさをしみじみと味わう意もなく自分の 一生の運命に関わる重大な問題を不に花へ 広げられた彼はしばらく息が詰まるような 目がくらむような心地に襲われて戦慄し ながら立ちすくんでい たさてもその後の数々のことどもいず子に 筆を起こし伊豆子に筆をとむべくそやらん 自ら山にまかりこし絶えて久しめしてあの あたり申し聞こえんと覚えそえども一旦 沖手を破りそろう身にては一女のみ高く そば立ちて仰ぐべからず一味の谷に深く たえて近づきがしとこそ覚え そえこう書いてある手紙の端を持ったまま 瑠璃子は自分の身を疑うがごくただの空で 所々の文言を慌しく読み出し た半日がほどにて帰りそらわんなど申し そいてか打ち過ごしそろ感定めて我に図ら れたりとおしめされそらわんこと返す返す も口惜しく心苦しく覚え そろ千住が身においては去る心が 初めより梅雨ばかりもらわずその日の 夕暮れ宿房へ戻りそわんとですでにきらら 声に差し掛かりソをおりふしにわかに物影 より踊りいでたる人の様にて浅まし口を 塞がれ目を下がれていずこともなくかかれ そろほどの 心地ぶち立ちに至りて行きながら途八難に くと覚えそらしぞ やこういう首相な文句もあればまた 思い切って大胆なあらおかしやあらおかし やという言葉を持って書き起こした神をも 仏をもはからぬような一説が見え たあらおかしやあらおかしや浮は夢にても 幻にてもそらずはは西方上土を減じたる 安楽国にてそろぞ や今日この頃の千住がためには1年 3000の訪問も3体延雄の官業もさらに よありとも覚えず そろエトの行者たらんよりは煩悩のポンプ たらんことはるかに楽しく喜ばしくそかし に申しそろうことば構えて恩まいある べからずそろう特々恩心をひがして山を 降りさせたうべきなりと覚え そろうこれがまさしくあの千寿丸の興奮で あろう かあれほど新人深かった煩悩の二を呪いに 呪っていた丸のこれが本当の両であろう かその文章の全幅に溢れている冒涜な言語 と妙にウキウキした調子と一種人を圧迫 するような一組とは瑠璃子の胸に強い反感 を挑発するとともに一方ではそれと同じ強 さを持って長い間頭の奥に潜んでいた浮き よにに対する好奇心がムムと湧いてくるの であっ た明日の朝まででよろしくございますから とっくりとお考えなさいましもまでも ございませんが決して人に相談をなすては なりませんこの山の坊さんたちの言うこと はみんな真っ赤な嘘でござい ますあなた様のような罪のない落ちに 世の中を諦めさせようとしていい加減な 気休めを言うのでござい ますどにもかにもその不味をゆっくりご覧 になった上ご自分でご分別をなさい ましようございます か男は瑠璃子の顔付きに現れているコの色 をそれと見て取ってそそのかすように行っ たそして忙しそうに23°軽く頭をを下げ てスタスタと石段を駆け降りていっ たそれでもまだ瑠璃子の体の震えは止まら なかっ た男は純潔な気一本な少年の心に入りきれ ないほどの重苦しいものを託していっ た自分が明日の朝までに用意しておく返答 によって自分の将来がどうにでもなる そんな大事件が彼の手に委ねられた試しは かつてなかっ たそう自覚するだけでも彼は激しい同機を 制することができなかっ た夜になっても不安と興奮とに脳裏を支配 されて彼は到底与えられた問題を静かに 落ち着いて考えるわけにはいかなかっ たとえに風られて人の秘密を暴き至る ところに脅威の文字をつねてある不思議な 手紙 をもう少し胸騒ぎが収まってから読み返し てみようと思いながらそっと机の上に乗せ た まま彼は名目して一心に仏を念じ た懐かしい有の束ではあるけれどせっかく 自分が有名人の志しを固めてず企業の皇を 積もうとしているものを不に横合いから かき乱すとするのが恨めしくもあり 腹立たしくもあった [音楽] 明日の朝まででよろしございますから とっくりとお考えなさいましもまでも ございませんが決して人に相談をなすては なりませんこの山の坊さんたちの言うこと はみんな真っ赤な嘘でござい ますあなた様のような罪のない落後に 世の中を諦めさせようとしていい加減な 気休めを言うのでござい ますどにもかにもその不をくりご覧になっ た上ご自分でご分別をなさいましよう ございます か男は瑠璃子の顔付きに現れているコの色 をそれと見てとってそそのかすように行っ たそして忙しそうに23°軽く頭を下げて スタスタと石段を駆け降りていっ たそれでももまだ瑠璃コの体の震えは 止まらなかっ た男は純潔な気一本な少年の心に入りきれ ないほどの重苦しいものを託していっ た自分が明日の朝までに用意しておく返答 によって自分の将来がどうにでも なるそんな大事件が彼の手に委ねられた たしはかつてなかった そう自覚するだけでも彼は激しい同機を 制することができなかっ た夜になっても不安と興奮とに脳裏を支配 されて彼は到底与えられた問題を静かに 落ち着いて考えるわけにはいかなかっ たとえに風られていた女人の秘密を暴き 至るところに脅威の文字をつねてある 不思議な手紙をもう少し胸騒ぎが収まって から読み返してみようと思いながらそっと 机の上に乗せた まま彼は名目して一心に仏を念じ た懐かしい給油の消息ではあるけれど せっかく自分が有名商人の志しを固めてず 企業の皇を積もうとしているものをに 横合いからかき乱すとするのが恨めしくも あり腹立たしくもあっ [音楽] た読めば迷いの元に なる吐き捨ててしまおうかしら んこう思うそば からそんなに危険を感ずるほど自分は弱い 人間ではないと己れの卑怯をあう気にも なっ た自分が迷うのも迷わぬのも見仏の おぼしめし1つで ある浮が幻でないという千寿丸の言葉が 果たしてどれだけしずに至るか どれだけ自分を誘惑する かその誘惑に耐えられないくらいなら自分 は見仏に捨てられたのであるとおりおり頭 をもたげてくる好奇心が彼に色々の弁解の 字を作らせずには置かなかっ たそもそも女人の優しさ美しさ絵にも不に も書きしがく 何に例え何に比べてか告げ参らせそら は昨日もヨの津に船を浮かべて江口と申す ところに参りそえば川沿いの家家より天田 の遊び目たち水にさをさしてよりついそろ あり 様精子菩薩の織りたもか陽龍関音の業した もかと怪しまれて4人もめでたく ありがたく覚えそらしにやがて千住が船を 巡りて口口にサバを歌いどもしそえば何に てもあれ歌一瞬聞かせてんやと申しそろう ほどに1人の遊び目船端を叩い てうじより室へ通う釈にもラゴラが母はあ こそ聞けと繰り返し繰り返し不おし歌で そろもの かその前後の文章は千住が渾身の力を込め て瑠璃子の同心を突きそとしているような 書き方であっ た生まれ落ちてから16年の後初めて世間 というものを見せられたわの無限の感と 三々とがそこに小く叫ばれてい たあるところでは右頂点になって踊り あがりあるところでは自分を欺いていた 商人を 恨みあるところでは幼馴染みの瑠璃子の ために昔に変わらぬ友情を誓って下山を 進めているのであっ たコは今までにこれほど深い独語の印象を 教門の一説からも他の何者からも受けた ことはないように感ぜられ た10万億度の彼にあると信でられていた 極楽上土はついこの山の麓に あるそこには無数の生きた菩薩がいて自分 が行けばいつでも艦体してくれる この驚くべき事実はもはや一点の疑う余地 も ない千住の手紙には書きもらしてある けれどもそこには定めて火瓶がや孔雀や オムがさえずっているので あろうシコ目のの老学や金銀借手の街道が 気づかれているので あろう立ち瑠子の目の前にはお話にある ような素晴らしい空想の世界が描き出され たのであっ たそれほど楽しい世界へ降りていくことが 何ゆえ五藤の妨げになるので あろう何故商人はその世界を癒しみその 世界から自分たちを遠ざけようとなさるの で あろう彼は誘惑に打ち勝とうとする前に 打ちかたなければならない理由を知り たかっ た彼はほのぐらいとかの影に不を繰り広げ ていく度も読み返し ながら一晩中まんじりともせずに考え 明かし た自分の知識自分の理解力のあらゆる範囲 から手紙の事実を否認するにたるだけの中 のより所を掴みだそうともがいても見 た我れながらけなげであると思われるほど 両親の声に耳を傾け仏の救いを求めても見 たそして 結局彼が最後の決心を躊躇させているもの はただ住み慣れた宿院の生活に対する未練 と商人の軍が強いる盲目的な異との他には 何も存在しないのであっ たしかしこの2つのものは案外必要に彼の 心を捉えてい た彼がどうしても山を折り舞いと務める ならばこの2つの感情をできるだけ好調 するより道はなかっ たお前は千寿丸の言葉を信じてブッタの 教えや商人の戒めを信じないの かもったいなくもブッダや商人を嘘つきだ というのかそれでお前は住むと思うの かこう彼は声に出してまで呟いてみ た浮は千寿丸の言うようにきっと面白い ところにそうい ないけれどもその面白さに引かさ 14年来築き上げた護な信仰を一にして 投げ打ってしまって良いであろう か自分はこの間から何業苦行に耐えようと いう誓を立ててはいなかった か現世の快楽を得られたにしてもそのため にブバを被って来世で地獄へ落ちるので あったら10倍20倍の苦痛ではないか 血というものは争われ ないこの文句がその時ふと瑠璃子の胸に 浮かん だ自分と千寿丸とは幼よりから既婚が違っ て いる自分には見仏の加護が ある自分が今運よく来世の王法を思い出し たのも必ず見仏の加護に違い ない来世というものがある以上自分はどう してぶちを恐れずにい られよう来世の希望があればこそ商人は 我々に現世の快楽を金銭られたので あろう千寿丸は信じていないようであるが 自分はあくまでも来世を信じぶちを 信じよう それでこそ初めて自分の既婚が優れている と言えるではない か商人が自分を褒めてくだすったのはここ のことを言うのではない かその考えは例えば天の刑事のようにる 履行の頭上に降ってき た最初は電光のごとく先々ときらめいてい たものが次第に海の波のごとく広がっ ひたひたと瑠璃子の魂を浸し全身にみって き たその 清々しい流浪たる音楽に酔っているような 心持ちはざまの境地に入った行者でなけれ ば味わ言えない尊い宗教的感激であるかの ように覚えたのであっ た瑠子は我知らず底を合わせて見えぬ仏を 拝ん だそうして胸の奥で次の言葉を続け様に 繰り返し たしばしの間でも根性の映画に心を移して ラセの家法を捨てようとした愚かな罪を どうぞお許しください ましもう私は2度と再び今夜のような 浅ましい考えを起こすことはございません どうぞお許しくださいまし もうどんなことがあっても自分は人の誘惑 に乗りはし ない千寿丸が現世の快楽にふけりたいと 思うなら1人で勝手にふけるが 良いそれでラセは無限地獄へ真っさらに 落とされて無良合の苦しみを忍ぶが 良いその折りにこそ自分は西方上土へ行っ て高いところから彼の泣きわめく姿を 見下ろして やろうもうなんと言われても自分の信念は ゆにはしない自分は危機一発の際に 食い止めたのだもう大丈夫もう確か だ瑠璃子がこういう決心に到達した 時長い秋の世が白と明るく 赤月の業の金が朗らかになっ た彼は平成より行そばも緊張した心を抱い て今し方目を覚ましたらしい商人の今へ うやうやしく思考し た千寿丸の使いの男はその日の朝のう頃に 郎の石のほりにいると果たしてそこへ ルリコ丸はやってきたが少年の答えは彼の 良に外れてい た幸夫は面白いであろうがマロには少し彩 があって山を降りるのをやめに するまろは女人の情よりもやはり見仏の恵 の方が ありがたいと瑠璃子は言っ たそうして懐からの柄を取り出し ながらマロはこの世で苦労する代わりに後 の世で安楽を受けるつもりだと千住殿に 伝えて おくれこの不味を持っているとかって心の 迷いになるどうぞこれもついでに持って 帰って おくれ男が不思議そうに目をしいて何事を か言おうとしている隙に急いで子はを地に 投げ捨てて後をも見ずに宿房の方へ姿を 消し たかてその年の冬になっ たもうお前も来年は15になる千寿丸の霊 もあるから春になったらそうそう出家を するが良いと 商人は瑠璃子に行っ ただが一旦遊の消息によってかき乱され そうになった彼の心は一時の情熱で無理に 抑えてはいたものの決して長く平成を保っ てはいなかっ た彼の胸にもだんだん煩悩が明けの光を 放ち始め たかつて丸を苦しめた妄想の意味が彼にも よよ分かりかけてきた彼も千寿丸と同じ ように女人の影を夢に見たり同等のしぼ薩 の像に怖を感ずる時代となっ たどうかすると彼は千寿丸の手紙を返して しまったのが惜しいような気持ちがし たことによったらまた深から使いの男が木 はしまいかとなんとなく待たれる日もあっ た彼は商人に顔を見られるのが恐ろしかっ たけれども未だに見の名語を信じている 瑠璃子は千寿丸のような無分別な行動を 取ろうとはしなかっ た彼はある時商人の前にかしこまって こんなことを言った 商人様どうぞ私の愚かさを哀れんで ください まし今では私も千住殿をあわうことができ ない人間になりまし たどうぞ私に煩悩の炎を沈める道を女人の 幻を打ち消す方法を授けてください まし下立の門に入るためにはどんなに辛い 修行でも厭わぬ覚悟でございます お前はそれをよくわしに残してくれた 見上げた心がけだ関心な事後だと商人が 言っ たそういう邪念がきした時にはひえに見仏 のおじ悲におすがり申すより仕方が ないこれから21日の間 怠らず水ごりを取って北家堂に散乱するが よいそうすればきっとご利益に預かって今 しい幻を打ち払うことができる だろうこう商人が教えてくれ たちょうどその悪る日から21日目の満貫 の夜であっ た瑠璃子が道内の柱に持たれながら連日の 疲労の結果とろとろといりをしていると夢 の中に気高い老人の姿が現れてしりに彼の 名を呼んでいるらしかっ たわしはお前に良いことを知らせて あげるお前は咲の世で天宿のある国王の 御手にに使えている役人であっ たその自分そこの都に1人の美しい女人が いてお前を深く恋しってい たしかしお前はその頃から同心の天護な 強欲に溺れない人間であったため世人は どうしてもお前を迷わすことができなかっ たの だおは女人の色かを知りとけた全員によっ てこの世では商人の膝元に育てられ ありがたい知識を授かる身の上になった がお前をしていた女人も未だにお前を忘れ かねて姿を変えてこの山の中に住んで いるお前が女人の幻に苦しめられている なら その女に会ってやるが 良いその女はお前を迷わせようとした罪の 報いでこの世では金重の症を受けたが尊い 令嬢を住みかとして朝夕教門を耳にした ためにラセには最上土に生まれるの だそうしてようやく極楽のレゲの上で お前と共に微妙の菩薩の層を減じてじじぽ のぶたの巧妙に欲するの だその女は今1人でこの山の釈迦ヶのいき に手傷を覆って死のうとしている早くその 女に会ってやるがよいそうしたらその女は お前より先にの国へ行ってお前の母体を兼 ながら助けてくれる だろうお前の妄想は必ず名残りなく晴れる だろうわしはお前の信仰を めるへん菩薩の死者となって都卒点から 降りてきたもの だお前の信仰が行成長く緩がないように この水晶の頭を 与える決してわしの言葉を疑てはなるまい ぞ瑠璃子がはっとして我に帰った 時もう老人の姿は見えなかったにもかわら ず彼の膝の上にはまさしく水晶の頭が赤月 の梅雨のようにササと輝いていた 12月も末に近い朝の身を切るような完封 の中を釈迦ヶの頂上へ登ろうとするのは 痛いな事後にとって37日の水ごりに増す 何業であろうものを朝かららぬ三世の祝園 をついでいる女人の現世の姿に相たさに 険しい山道を夢中でたどっていく瑠璃子に は何の苦も 何の将も感ぜられなかっ た途中からひとして振り出した綿のような 雪さえも彼の一徹な意思と情熱とますます 燃え上がらせる薪に過ぎなかっ た見る見るうちに天も地も谷も林も高頭 たる銀色に包まれていく間を彼はいく度か つまづきなら進ん だよよ頂上に達したと思われる頃であっ た渦を巻きつつ頻yetとして降り積もる 雪の中にそれよりもさらに真っ白な1階の 雪のせかと怪しまれるような名のしれぬ1 話の鳥が翼の下に痛ましい負傷を受けて てんてんとピンクの花を散らしたように血 をしたたらせながら地に転げてあえにもえ て苦しんでい たその様子が目に止まると瑠璃子は一差に 走り寄ってひを庇う親のごとく両腕に彼女 をしっかりと抱きしめ たそうして声も立てられぬほどの嵐の底 から身の称号を高く高く唱え 手に持っていた水晶の頭を彼女のうじに かけてやっ た瑠璃子は彼女よりも自分が先に小にはし ないかと危ぶまれ た彼女の肌へ覆いかぶさるようにして顔を 伏せている瑠璃子の 可愛らしい小さな建築のような血の髪に の羽毛とも粉雪とも分からぬものがしりに ハラハラと降りかかった [音楽] [音楽] [音楽] あ [音楽] [音楽] 今回のの朗読はいかがでしたかそれでは また次回お楽しみに [音楽] [音楽]
💬父母の顔も知らない二人の幼き子が、訳あって貴い上人に引き取られ、比叡山で仏道を志す。
浮世を知らず女人の顔さえ見たことのない二人の好奇心は、二歳年上の千手丸の心を乱し、
歳を経るごとに、その “煩悩” で少年は苦しめられていく―。
👩🏻女人とは、世に住んで居る人間の一種で、総べての禍(わざわい)の源。
🔷今回は、谷崎潤一郎 の『📍二人の幼き子』を朗読します!🔷
【主な登場人物】
千手丸 ---- 近江の国の長者の息子。4歳の時に比叡山に預けられた。15歳。
瑠璃光丸 --- 貴族(少納言)の息子。3歳の時に比叡山に預けられた。13歳。
お坊さん --- 師匠。千手丸と瑠璃光丸の育て親。
【用語解説】
🧠煩悩(ぼんのう)
仏教の教義の一つで、身心を乱し悩ませ智慧を妨げる心の働き(汚れ)を言う。
📌目次
00:00:00『オープニング』
00:00:29『しおり1』
00:26:46『しおり2』
00:52:52『しおり3』
01:19:01『エンディング』
👦🏻谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう, 1886年 – 1965年)
東京・日本橋生れ。東大国文科中退。
在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。
同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。
当初は西欧的なスタイルを好んだが、次第に純日本的なものへの指向を強め、伝統的な日本語による美しい文体を確立するに至る。
主な作品に『痴人の愛』『春琴抄』『卍』『細雪』『陰翳礼讃』など。
1949年 朝日文化賞受賞。
1963年『瘋癲老人日記』で毎日芸術賞受賞。
【関連ワード】
藤沢周平, 邪剣竜尾返し, 臆病剣松風, 暗殺剣虎ノ眼, 必死剣鳥刺し, 隠し剣鬼ノ爪, 女人剣さざ波, 悲運剣芦刈り, 宿命剣鬼走り, 酒乱剣石割り, 汚名剣双燕, 女難剣雷切り, 陽狂剣かげろう, 偏屈剣蟇ノ舌, 好色剣流水, 暗黒剣千鳥, 孤立剣残月, 盲目剣谺返し, たそがれ清兵衛, 山本周五郎, 宮部みゆき, 池波正太郎, 鬼平犯科帳, 司馬遼太郎, 竜馬がゆく, 向田邦子, 岸田今日子, 松本清張, 横溝正史, 江戸川乱歩, 赤川次郎, 西村京太郎, 夏木静子, 村上春樹, 東野圭吾, 綾辻行人, 湊かなえ, 角田光代, 小野不由美, 浅田次郎, 阿刀田高, 宮本輝, 時代劇, 時代小説, 歴史小説, 推理小説, ミステリー, サスペンス, フィクション, ノンフィクション, sf, 恋愛, ロマンス, 童話, 絵本, ドラマ, ラジオドラマ, 作業用, 睡眠用, bgm
【関連リスト】
🖊️谷崎潤一郎
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🖊️藤沢周平
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🖊️山本周五郎
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🖊️宮部みゆき
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#朗読 #二人の幼き子 #谷崎潤一郎
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