【朗読】岡本綺堂 『兜』- それを所有した者は……! オーディオブック

[音楽] カブト岡本 紀道 1私はこれから国原君の話を紹介し たい国原君は東京の山手に住んでいて大正 12年の震災に巨と火全部を焼かれたので あるが家に伝わっていた古いカブが不思議 にただ1つ助かっ たそれも国原君自身や家族のものが 取り出したのでは ないその一家はほとんど木のみきのままで 目代の方面へ避難したのであるが何でも9 月半ばの雨の日に1人の女がその避難先へ 訪ねてきて震災の塔やオタクの門前に こんなものが落ちていましたからお届け 申しますと言ってかの兜を置いて帰っ たその時あかも国原君らは不在であったの で避難先の家人は何の気もつかずにそれを 受け取って彼女の生命をも聞き漏らしたと いうので ある何分にもあの混雑の際であるからそれ も呼んどないところであるが彼女は一体 何者でどうして国原君の避難先まで わざわざ届けに来てくれたのかそれらの 事情は一切分からなかっ たいずれそのうちには分かるだろうと国原 君も深く気にも止めずにいたのであるが その届けのは今に至るまでわから ない焼け跡の区画整理は片付いて国原君 一家は旧宅地へ立ち戻ってきたので地人や 出入りのものなどについて心当たりを いちいち聞きたしてみたが誰も届けたもの はないと いうそこでさらに考えられることは平成 ならとわれあの大混乱の最中に身元不明の 彼女がたえ国原家の門前に落ちていたとし てもその兜をすぐに国原家の品物と認めた というのが少しく不審で ある第一国原の一族は前にも言う通り ほとんど木の未木のままで立ち退いたので あるからカブトなどを門前まで持ち出した 覚えはないというので あるそうなるとその事情がいよいよ分から なく なるまさかにそのカブトが口を聞いて俺を 国原家の避難先へ連れて行けと言ったわけ でもある まいソテが妙国寺へ行こうといいあ丸が 伊豆へ行こうといった昔話を今更引き合い に出すわけにも行く まい花良くない想像であるが門前に落ちて いるはずのないかのカブトが果たして門前 に落ちていたとすれば東やの土佐に紛れて 何者かが家の中から持ち出したものでは ないかと思わ れる一旦持ち出しては見たもののカブト などはどうにもなりそうもないので何か他 の金目のありそうなものだけを抱え去って 思いカブトはそのまま門前に捨てていった のではあるまいかそれを彼女が拾ってきて くれたので あろう盗んだ本人がわざわざと届けにくる はずもあるまからそれを盗んだものとそれ を届けてくれたとは別人でなければなら ない盗んだものを今更技する必要もないが 届けてくれたものだけはそれが何人である かを知っておきたいような気がしてなら ないと国原君は言って いる以下は国原君の談話を紹介するので あるからその兜について心当たりのある人 は国原君のところまで知らせてやって もらい たいそれによって彼は今後その兜に対する 使い方を少しく変更することになるかも しれないので あるまずその兜が国原家に伝わった由来を 語らなければなら ない分球2年といえば今から64年の昔で ある江戸の末期であるから世の中はひどく 想像 しい将軍家のお膝元という江戸もすこぶる 物騒で押し込みの強盗や辻切りが毎晩の ように 続くその8月の12日の酔いで あるこの年は8月にウルーがあったそうで ここに言う8月はウルーの方であるから 平年ならばもう9月という自説で朝晩は めっきりと冷えてき たその冷たい四つを踏んで1人の男が湯島 の切り通しを抜けて本郷の大通りへ出て かの加州の屋敷の門前に差しかかった 前にも言う通り今夜は8月12日で月の光 はさえ渡っているのでその男の姿は鮮やか に照らし出され た彼は人物の尻をはった長人亭の男で 大きい風呂敷ず身を抱えて いるそれだけならば別に不思議もないので あるが彼はその頭に鉄の兜を頂いてい たカブトにはシコもついてい たたえそれがでなくても人へを着てカブを かぶった姿などというものは虫干の時か 何かでなくてはちょっと見られない絵で あろうそういう異業の男が加州の屋敷の 門前を足早に通りすぎてやがて追分に 近づこうとする時にどこから出てきたのか 知らないが不につかつかと駆け寄って後ろ からその兜の鉄片へ切りつけたものがあっ た男はあっと驚いたがもう振り返ってみる 余裕もないので半分は夢中で長ありも 逃げ延びて道端の小さい屋敷へ駆け込ん だその屋敷は国家でその頃祖父の貫中郎は 隠居して父のカ治郎が家督を相続していた がまだ若年で去年よよ万喜をしたばかりで あるから屋敷内のことはやはり祖父が支配 していたので ある小心ではあるが屋敷には中原2人を 召している カブトをかぶった男は大きい胃腸の木を 目当てにその屋敷の門前へかけてきたが夜 はもういつ午後8時を過ぎているので門は 締め切って あるその門をむやみに叩いて中原の1人が 開けてやるのを待ちかねたように彼は息を 切って転げこんできて中の口すなわち 内玄関の甲子先でぶっ倒れてしまっ たカブを被っているので誰だかよくわか 他の中原も出てきてまずその兜を取って みると彼はこの屋敷へも出入りをする金兵 という道具屋であっ た金兵は白山前町に店を持っていて道具屋 と言っても主に鎧兜や刀剣槍弓の武具を 取り扱っているので国原系も出入りをして いる年は40前後でスコブル呑気な面白い 男であるのでさみしく出をするというほど でもないが屋敷内の人々によく知られて いるので今夜彼が慌しく駆け込んできたに ついて人々も驚いて騒い だ金兵どうし たやられまし たと金兵衛は倒れたままで唸っ た頭のてっぺんから割られました 喧嘩か辻切り かと1人の中原が聞い た辻切りです辻切りですもう行けません水 を くださいと金兵はまた唸っ た水を飲ませて解放してだんだん改めて みると彼は今にも死にそうなことを言って いるがその頭はもちろん体の中にも別に気 らしい跡は見出されなかっ たどこからも血などの流れている様子は なかっ たおい金兵しっかりしろお前は狐にでも ばかされたんじゃねえ かと中原羅は笑い出し たいえ切られました確かに切られたん ですとと金兵は自分の頭を抑えながら言っ たカブトのてっぺんから梨割りにされたん ですバカをいえお前の頭はどうもなってい ないじゃねえ か押し問答の末にさらにその兜を改めると なるほどそのてっぺんに薄い立ちの跡が 残っているらしいが蜂そのものがよほどに できていたのかあるいは切ったものの腕が 鈍かったのかいずれにしてもカブの蜂を 打ちわることができないで金兵の頭は無事 であったということが分かっ た全く人たちでざくりとやられたものと 思っていまし [音楽] たと金兵はほっとしたように行ったその 口ぶりや顔つきがおかしいので人々はまた 笑った それが奥にも聞こえて隠居の貫郎も主人の カ治郎も出てき た金兵はその日下や同道の同商売の店から 他の古道グと一緒にかの兜を買い取ってき たので あるその店はあまり武具を扱わないので カブトは邪魔者のように店の隅に押し込ん であったのを金兵がふと見つけ出して元 同様に引き取ったが他にも色々の荷物が あってその持ちかえが不便であるので彼は カブを被ることにして月の明るい夜道を たどってくると計らずもかの災難に出会っ たのであっ た最初から辻切りのつもりで通行の人を 待っていたのかあるいは一時の出来心か いずれにしても彼がカブトを被っていたの が災いのもで切る方から言えばカブトの 鉄片から真に切ってみたいという注文で あった らしいいくら夜道でもカブトなどをかぶっ て歩くからそんな目にも合うのだとカ十郎 は笑いながらしっ たそれでも彼は武士である一面には金兵の バカバカしさを洗いながらもカ十郎はその 兜を見たくなっ た切ったものの腕前は知らないがともかく も蜂のてっぺんから打ち下ろしてカブトに も人にも筒がないという以上それは相当の カブ市の柵でなければならないと思ったの で十郎は金兵を中へ呼び入れて明りの下で その兜を改め た刀剣については相当の鑑定癌を持って いる彼もカブトについては何にも分から なかったがそれがかなりに古いもので蜂の 機体も決して悪くないということだけは 容易に判断され た世の有様が穏やかで亡くなってい方でも 武具の用意や手入れに忙しい自説であるの で貫中郎はその兜を買いたいと言い出すと 金兵は1もにもなく承知し たどうぞお買いくださいこれをかぶってい たために危なく真にされるところでした こんな演技の悪いものは早く手放して しまいとござい ますその代金は追って受け取ることにして 彼はその兜を置いて帰っ た2 カブトの値はいくらであったかそれは別に 伝わっていないがその以来カブトは国原の 床の間に飾られることになって下屋の 古道具屋の店に転がっているよりは少しく 出世したので あるある人に鑑定してもらうとそれは何台 目かの明神の柵であろうというので貫十郎 は思いもよらない掘り出しもをしたのを 喜んだという話であるからおそらくスネ 同様にねり倒して買い入れたので あろうそれはまずそれとしてその明る朝 本郷の追分に近い道端に1人の侍が腹を 切って死んでいるのを発見し た年の頃は356で見苦しからのいたちの 人物であったがどこの何者であるかその 身元を知りうるような手がかりはなかっ たその噂を聞いて金兵は国原家の中原らに 囁い たその侍はきっと私を切ったやつですよ 場所がちょうど同じところだから私を切っ た後で自分も切16したん でしょうお前のようなトーナ頭を2つや3 つ切ったところで何も説服するにゃ及ぶ めえと中原は笑っ た金兵は仕切りにの侍であることを主張し ていたが彼もその相手の人証や風俗を 見届けてはいないのであるから所詮は 水かけ論に終わるの他はなかっ たしかし彼の主張がまざら根拠のないこと でもないという証拠の1つとしてその侍の 刀の歯がよほどこぼれていたという噂が 伝えられ た彼は相手の兜を切り得ないでかって自分 の刀の傷ついたのを恥悔やんで潔よくその 場で自殺したのであろうと金兵は主張する のであっ たどういう身分の人か知らないが辻切りで もするほどの男がまさかにそれだけのこと で自殺しようとは思われないので満一それ が金兵の兜を切った侍であったとしても その自殺には他の事情が潜んでいなければ ならないと認められたがその身元は結局 不明に終わったということであっ たいずれにしてもそれは国家にとって何の かかりもない出来事であったがその兜に ついてさらに新しい出来事が起こっ たそれから2月ほどを過ぎた10月の半ば にカブトが突然に噴出したので あるそれは小春日和のうらに晴れた日の 昼過ぎで当初のカ治郎は出番の日に当たっ ているので朝からルスであっ た隠居の貫郎も牛込あたりの親類を訪ねて いってルスであっ たカブとはその間に紛失したのであるから 隠居と主人のルスを伺って何者かが盗み 出したのは明白であったが座敷の縁側にも 人の足跡らしいものなどは残されてい なかっ た他には何にも紛失もはなかった族は白地 大胆に武屋敷の座敷へ忍び込んで床の間に 飾ってある兜と1つを盗み出したので あるその当時の国原は隠居とその妻の奥と 当初のカ治郎との3人でカ治郎はまだ独身 であっ た他には中原2人と下女1人で中原らは いずれも主人の友をして出ていたのである から家に残っているのは国と下女だけで彼 らは大所で何か立ち働いていたために座敷 の方にそんなことの起こっているのを ちっとも知らなかったというので ある盗んだものについては何の手がかりも ないしいて疑えば日頃国原へ出入りをして その兜を見せられたものの1人が羨ましさ のあり欲しさのありに悪心を起こしたもの かとも想像されないことはないのであれか これかと数えていくとその剣技者が23人 ぐらいはないでもなかったが別に取り止め た証拠もないのに武士に対して盗っとの 疑いなどをかけるわけにはゆか ない国家では自分の不注意と諦めて何かの 証拠を見い出すまでは泣き入りにして奥の 他はなかっ たどうも普通の族ではないと貫十郎は言っ た常の間には箱入りの刀剣類も置いてあっ たのに族はそれらに目をかけず寄りによっ て古びたカブと1つを抱え出したのを見る と最初からカブを狙ってきたものであろう まさかにかの金兵衛が取り返しに来たので もあるまい族はこの屋敷に出入りする侍の 1人にそういないと貫郎は鑑定したカ治郎 も同じ意見であっ たそれにつけてもかのカブトの出所よく 取りたしておく必要があると思ったので 国原では金兵を呼び寄せて戦技すると 金兵衛もその紛失に驚いてい た実は自分もその出所を知っていないので あるから早速下屋の道具屋へ行って聞き あわせてくると言って帰ったがその翌日の 夕方に再び来て次のようなことを報告した 今朝下屋へ行って聞きますとあのカブトは 今年の5月何でも雨のびしょびしょ降る 夕方に278の女が売りに来たんだそう です私の店では武具を扱わないから他の店 へ持って行ってくれと一旦は断ったそう ですがいくらでもいいから引き取ってくれ と仕切りに頼むのでこっちも気の毒になっ てとうと買い込むことになったんだという こと ですその女は屋敷者らしい上品な人でした が見はあまり良くない方でやれたバガさを さしていてつ遠ぐらいの女の子を連れてい たそうでま見たところでは浪人者か小心の ご家人のご心臓でもあろうかという風景で 左の目の下に小さい痣があったそう ですそれだけのことではその売り主につい ても何の手がかりを見出すこともでき なかった まあいいそのうちには何か知れることも あるだろうと国家でももう諦めてしまっ たそうしてまた2つきありも過ぎると12 月の末の寒い日である夕べから吹き続く 空っ風に鼻先を赤くしながらあの金兵が また駆け込んでき たご委居様1大事でござい ます茶の間の縁にに出て八上の梅を いじくっていた冠十郎は中へ引き返して 火鉢の前に座っ たひどく慌てているな霊のカブトの行方で も知れたの か知れまし たと金兵は息を弾ませながら答え たどうも驚きました全く驚きましたあの カブにが何か立っているんです [音楽] なたって いる私と同商売の善吉というやが夕べ下屋 の坂本の通りでやられまし たと金兵は顔をしかめながら話し た善吉は下や金杉に小さい店を持っている んですがそれが坂本2丁目の往来で切られ たんです こいつは私と違って後ろにばっさりやられ てしまいまし た死んだの かと感じ郎も顔をしかめ た死にました何しろ倒れているの往来の ものが見つけたんですからどうして殺され たのか分かりませんが自説柄のことです からやっぱり辻切りでしょう普段から正直 なやつでしたがかわいそうなことをしまし たよそれはまあ災難としてもここに不思議 なことというのはその善吉も兜を抱えて 死んでいたん ですお前はその兜を見た か確かに霊のカブト ですと金兵は一種の恐怖に囚われている ように囁い たどう商売ですから私もとりあえず悔みに 行ってそのカブトというのを見せられて実 にぎょっとしました死人に口なしですから 一体その兜をどこから手に入れてひっかえ てきたのか分からないというんですが私と いい善吉といいその兜を持っているものが 続いてやられるというのはどうも不思議 じゃありませんか考えてみると私なは運が 良かったんですねカブを被っていたのが 幸せで前吉のようにひっかえていたら やっぱり真にされてしまったかもしれない ところでし たそれがカブトの祟りと言いえるかどうか は疑問であるがともかくも国家から盗み 出されたかのカブトがどこかを点々して全 吉の手に渡ってそれを持ち帰る途中で彼も 何者にか切られたというのは事実で あるただしその兜を奪い取る目的で彼を 殺したものならばカブトが彼の手に残って いるはずはないその兜と辻切りとは別に何 のかかり合いもないことで単に偶然の回り あわせに過ぎないらしく思われるのでカ 十郎はその理屈を説明して聞かしたが金兵 はまだ本当に飲み込めないらしかっ たその兜には何かの祟りがあってそれを 持っているものは皆何かの災いを受けるの であろうと彼はあまでも主張してい たそれでは最初お前にその兜を売った同町 の道具屋はどうし たと貫十郎はなじるように聞い たそれが今になると思い当たることがある んです同道の道具屋の女房はこの7月にか で死にまし たそれは暑さに当たったん だろ暑さに当たって死ぬというのが やっぱりかの祟です よ金兵衛は何でもそれをカブトの祟りに こじつけようとしているのであるが貫十郎 はさすがに大償をさしている人間だけに むやみにたたりとか因縁とかいうような 機械な事実を信じる気にもなれなかっ たそこで旦那どうなさいますその兜またお 引き取りになりますか向こうではうるに そういありませんが と金兵は聞い た さあと貫十郎も考えてい たまあよそ よ私もそう思っていましたあんなカブトは もうお引き取りにならない方が無事で ございますよ第一それを持ってくる途中で 私がまたどんな目に会うか分かりません からね 言うだけのことを言って彼は早々に帰っ た 3下屋の坂本通りで全吉を切ったのは何者 であるかこの頃流行る辻切りであろうと いうだけのことでついにその手がかりを得 ずに終わっ た主人を失った全地の家族は店を畳んで どこへか立ちのいてしまったのでカブトの 行方も分からなかっ たおそらく他の諸道具と一緒に売り払うれ たのであろうと金兵は言ってい たそれから4年目の慶王2年に隠居の貫中 郎はよを去って相続人のカ治郎が明日とも に国原家のあじとなっ た彼はおちという妻を迎えて慶王3年には 峰とという長女を産ん だそれが現代の国原君の姉で あるその翌年は慶王4年すなわち明治元年 でカ治郎は23歳の春を迎え たこの春から夏へかけて江戸に何事が 起こったかは改めて説明するまでもある まいカ治郎はおいたる母と赤い妻と幼い娘 としべの方に預けて自分は上野の将棋隊に は加わっ た5月15日の午後カ治郎は落ち武者の 1人として振り仕切るさだの中を根岸の方 へ急いでいくと下屋から根岸方面の人々は 戦の南を逃れようとして思い思いに火を 取りまとめて立ち退いた後であるから道端 には色々のものが落っていてさながら上場 のようで あるその間を踏み分けてカ治郎はともかく も身の角へ落ちて行こうとすると遺がまま に何者にかつまづいて危うく倒れかかっ た踏みとまってみるとそれは1つのカブト であっ たしかも見覚えのあるカブトであっ た彼はそれを拾いとって小に抱え た持っているものでさえもなるべくは 打ち捨てて身軽になろうとする今の場合に 思い兜を拾ってどうする気であったか 5日になって考えると彼自身にもその時の 心持ちはよくわからないとのことであった がカ治郎はただなんとなく懐かしいように 思ってその兜を拾い上げたので あるそうしてその邪魔者を大自装に ひっかえてまた走り出し たミノの辺りまで落ち延びて彼はまた考え た雨が降っているものの夏の日はまだ なかなか暮れない 千住の塾にはおそらく神軍がたむろして いるで あろうその警戒の目をくぐり抜けるには 暗くなるのを待たなければならない さりとて往来に彷徨っていては一目に立つ と思ったので彼は円通時に近い一軒のかき 屋根を見つけて駆け込ん だ将棋体のものだ日の暮れるまで隠して くれ この場合嫌と言えばどんな乱暴をされるか わからないのとここらのものは皆将棋体に 道場を寄せているのとでどこの家でも将棋 隊の落ち武者を拒むものはなかっ たここの家でも心よく承知してカ治郎を 庭口から奥へ案内し た百勝夜ともつかず天夜ともつかないうち で表には腰高の生子を占めてあっ たここらのことであるから相当に広い庭を 取って若葉のしっている下に池なども掘っ てあっ たしかしかなりに古い家でかは6畳二間 しかないらしく神治郎はわらじを脱いで奥 の6畳へ通されると167の娘が茶を持っ てきてくれたその母らしい345の女も出 てきて挨拶し た見なりは良くないが2人ともに上品な 人柄であった 失礼ながらお紐軸はございません かと女は聞い た朝からの戦いでカ治郎は腹が空いている のでその夕がままに飯を食わせてもらう ことになっ たここのうちに男はいないの [音楽] かとカ治郎は前に向かいながら聞いた はい娘と2人切りでござい ますと女はつつましやかに答え たその目の下に小さい痣のあるのをカ治郎 は初めて見 た何の商売をして いる一仕事などをいたしており ます飯を食うと朝からの疲れが出て治郎は ずうと眠ってしまったやがて目が覚めると 日はもう暮れ切って池のかずが想像しく 泣いてい たもう良い自分だそろそろ出かけよう 起きて身をするといつの間に用意してくれ たのか身の傘の他に新しい造りまでも 取り揃えてあっ た腰弁当の握り飯もこらえてあった カ治郎はその親切を喜んで懐から1枚の 小番を出し たこれは少しだが世話になった霊だ 受け取って くれいえそんなご心配では恐れいり ますと女は固く辞退し た色々失礼なことを申し上げるようで ございますが旦那様はこからご遠方へ いらっしゃるんですから1枚の小番でもお 大切でございますどうぞこれはめなすって ください ましいやその他にも多少の用意はあるから 心配しないで取って くれ彼は無理にその金を押し付けようと すると女は少しく言葉を改めていっ たそれでは花勝手がしございますがお金の 代わりにおねだりも押したいものがござい ます [音楽] が大償は格別染め他のものならば何でも 望めあのお兜をいただきたいのでござい [音楽] ます言われてカ治郎は気がついた彼は拾っ てきた家の兜を縁側に置いたままで今まで 忘れていたのであった あああれかあれは途中で拾ってきたん だどこでお拾いなさいまし [音楽] た根岸の道端に落ちていたんだどういう 両肩で拾ってきたのか自分にもわから ない彼は正直にこう言ったが落ち武者の身 で拾い物をしてきたなどとあってはいかに もやしい浅ましい両のように思われてこの 親子にさげまんであると彼はまた正直に その理由を説明し たそのカブトは一度私の家にあったものだ それがどうしてか往来に落ちていたんで つい拾ってきたんだがあんなものを 持ち歩いていられるものではない欲しけれ ば置いていく ぞありがとうござい ますカブはカブ金は金であるからぜひ 受け取ってくれとカ治郎はかの小番を 押し付けたが親子はどうしても受け取ら ないので彼はとうとその金を自分の懐に 収めて出 た出る時にも親子は色々の世話をしてくれ て暗い表まで送ってきて別れ た上野の司法を取り巻いた神軍は三河島の 口だけを開けておいたので将棋隊の大部分 はその方面から落ち延びたが三島へ行く ことを知らたもは出口出口を塞がれて再び 江戸へ引っ越すの他はなかっ たカ治郎も逃げ道を失ってさらに小塚原 から浅草の方へ引っ越したそれからさらに 本上へ回って自分の母体地に隠れたその 以後のことはこの物語に必要は ない彼は無事に明治時代の人となって最初 は小学校の教師を務めさらにある会社に 転じて晩年は相当の地位に登っ た彼がまだ小学校に勤めている当時美の円 通時に産経し たその寺に将棋隊の戦士者を葬ってあるの は誰も知ることであるそのついでにかの 親子を尋ねて先年の霊を述べようと思って いさの手土産を携えていくとその家はもう 空屋になっているので近所について聞き 合わせるとその家にはお道お金という親が 久しく住んでいたが上野の戦いの翌年の夏 2人は奥の6畳のまで喉をついて自殺し たもちろんその主体は分からない古びた机 の上にカブトを飾って先行を備え2人は その前に死んでいたので あるその話を聞かされてカ治郎はぎょっと したそうしてそのカブトはどうしたかと 聞くと彼らの家には別にこれぞというも ないので近所のものがその火を売って葬式 を済ませたカブトもその時に小道具屋に 売り払うれれてしまったとのことであっ た彼らの墓もやはり円通時にあるのでカ 治郎は将棋隊の墓ととに拝んで帰ったその 以来彼は将棋隊の墓へ参る時には必ずかの 親子の小さい墓へも工を備えるのを例とし てい た憲法発の明治22年には神治郎ももう 44歳になっていたその当時彼は築地に 住んでいたので夏の酔いに銀座通りを散歩 すると夜店の古道具屋で1つの古い兜を 発見し た彼はいいねでその兜を買って帰っ たあまりに色々の因縁が絡んでいるので彼 はそれを見過ごすに忍びないような気がし たからであっ た彼はその兜を片身として明治の末年に世 を去った相続者たる国原君もその来歴を 知っているのでそのままに保存しておいた ので あるもちろんその兜が国原家に復帰して 以来別に変わったこともなかっ た道具屋の金兵は明治後どうしているか 分からなかっ たところが千年の震災にあたって前に行っ たようなやや不思議な事件が出退したので ある何者がその兜を国原家の門前まで 持ち出したかまた何者がそれを国原君の 避難先まで届けたかそれらの事情が判明 すれば別に不思議でも何でもないことかも しれないああそうかと笑って済むことかも しれ ないしかもそのカブトの歴史には色々の 因縁話が伴っているので国原君もなんだか 気がかりのようでもあると言って いる従ってそれを届けてくれた女になかっ たの甚残念がっているがそれを受け取った のは避難先の若い女中でその話によると かの女は345の上品な人柄であの際の ことであるからあまり綺麗でもない白地の 浴衣を着て破れかかったバガを指していた というのであっ たもう1つかの女の特徴というべきは左の 目の下に小さい痣のあることで女中は確か にそれを認めたというのである 国原君の父が身で宿を借りた家の母らしい 女も左の目の下に小さい痣があっ たしかしその女はもう50年前に自殺して しまったはずでたえ生きていたとしても 非常の老人になっていなければなら ないそれとも一種の遺伝でこの兜に因縁の あるものは皆その目の下に痣を持っている のかもしれ ないその以来国原君のサ君はなんだか気味 が悪いというのでその兜を自宅に置くこと を嫌っているがサリとてむざむざ手放すに も忍びないので国原君は今もそのままに 保存して いるそして往来を歩く時にも電車に乗って いる時にも左の目の下に小さい痣を持つ女 に注意しているがその後まだ1度もそれ らしい女に巡り合わないそうで ある満一彼が50年前の人であるならば僕 は一生訪ねても再び会えないかもしれ ない国原君もこの頃はこんな怪談じみた ことを言い出すようになっ たどうかその届けのを早く見つけ出して彼 の迷いを覚ましてやりたいもので [音楽] あるDET

それを所有した者は……! 怨念のこもった兜を巡る怪奇譚をBGM無しで読ませて頂きました。
おやすみや作業のお供にどうぞ……

◆作品:兜(青空文庫)

◆概要:
 友人の邦原君の家には代々伝わる不思議な兜があった。
 大正の震災の時、彼は家財を捨てて避難したにもかかわらず、その兜はある女によって手元に帰ってきた。
 女の身元は分からない。
 なぜ彼女が彼のことを知っていたのか?そして彼の避難先が分かったのか?
 その不思議な女と兜との関係は……

◆チャプター
0:00:00 一
0:12:24 二
0:24:37 三

◆著者:岡本綺堂 1872年11月15日 – 1939年3月1日
 イギリス公使館勤務の父の影響で、幼少の頃から漢文、漢詩、英語などの教育を受ける。
 尋常中学卒業後に新聞社に就職し、以後24年間にわたり複数の新聞社にて記者として勤務する。
 記者のかたわら文筆活動も行っていたが、1913年以降は専業作家に転身する。
 推理小説や怪談作品を多く残し、特にシャーロック・ホームズに影響を受けた「半七捕物帳」が有名である。一方、外国の怪奇物語などの翻訳も多く手掛けている。
 1939年、気管支炎に伴う肺浸潤が原因で死去する。

※一部現代において不適切と思われる表現がありますが、原文を尊重しそのまま読ましていただいております。

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 ▼【エドガー・アラン・ポー】黒猫
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A mysterious reading that makes you sleepy.
Novel : Kabuto(Samurai helm).
Author: Kidoh Okamoto (15 Nov 1872 – 1 Mar 1939)

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