夏目アラタの結婚
監督/堤幸彦
ケイゾク(00)
トリック(02、06)
恋愛寫眞(03)
SPECシリーズ(10,12-13)
20世紀少年(08-09)
など数々の映画を監督した方。
個人的に面白い映画も作りこむが、壮大なシナリオの場合どこか風呂敷をたたみきれいない印象もある

脚本/徳永友一
翔んで埼玉(19)
カイジ ファイナルゲーム(20)
ライアー×ライアー(21)
劇場版 ルパンの娘(21)
KAPPEI カッペイ(22)
翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜(23)
もしも徳川家康が総理大臣になったら(24)

など映画の評価がかなり振り幅が広い方だが今回は全12巻?と思われる内容をうまく2時間にまとめている。

出演/
柳楽優弥
黒島結菜
中川大志
丸山礼
立川志らく
福士誠治
今野浩喜
平岡祐太
藤間爽子
佐藤二朗
市村正親

シナリオが複雑気味でありながらもサスペンス・ミステリー展開の中にあるちょっとした不思議なヒューマンドラマ感と恋愛ドラマ感

これらを柳楽優弥と黒島結菜の主演2人の演技力によって魅入ることができる映画になっている。

児童相談員の夏目アラタ(柳楽優弥)の名前を使って、
死刑囚との手紙のやり取りをしていた少年が夏目アラタの職場の児童相談所に謝罪に来ている。

死刑囚と文通した少年の目的は、犯人がどこかに隠した、父親の頭部を見つけることだった。

夏目アラタは少年に変わって、“品川ピエロ”の異名をもつ死刑囚、真珠(黒島結菜)と面会し消えた遺体を探し出すことにする。

初めてあったときに結婚を申し込む夏目アラタ。彼女との1日20分面会のなかで語られた事件に関する言葉に翻弄されていくのだが…

まず柳楽優弥の演技の秀逸さはお見事
淡々と流れていくシナリオの中で微妙な表情の変化と心理面における変化を演じ分けている。動揺したときの超微量な焦りの雰囲気づくりなど、流石と思わずにはいられない。

そして後半にむけて殺人事件における真実にたどり着くときの心理面の変化における柔らかでありながらも同情心が全面に出る雰囲気は観ている側に訴える力を感じる

静かなシーンなのに観客をグッと惹きつけるアテレコのナレーションの声もうまさだろう。

そしてヒロインの黒島結菜
特殊メイクで作られた不並びな葉を魅せるシーンを始め、予告編で流れたジョーカーを思われる不気味さの笑顔や狂気を感じるセリフ。
若い女性としてのボクっ子の部分など、喜怒哀楽の振り切った演技に背筋が凍る思いをする人もいるかも知れない

そしてこの2人の心理面における駆け引きが行われるが、映画は基本的に夏目アラタの目線のみで描かれるため「相手の本質部分がわからないから怖い」演出が見事に活きているともいえる。

原作漫画の映画化として避けて通れないのが原作エピソードの省略などの改変だと思う。

漫画原作=漫画と同じシナリオで展開されるのが望まれる
という傾向がある。
それがもとで日本テレビにおける漫画のドラマ化では大きな問題となった。

その際に考えないといけないオは原作者が改変をどこまで理解をし許諾をしてるのか?
だが真実の部分はわからないことが多いので明確な答えは出せないが、今作でいうと、全12巻を2時間にまとめるには無理があった部分もあるのは事実。

そのためキャラクターのポジションやキャラの持つ背景はかなり変化しているといった原作改変になっているものの、原作未見の人でも楽しめる完成度になっているのは事実。

その一方で3つの殺人事件の真実や3つの事件の被害者の深堀りはほぼなく、どこまでも夏目アラタと真珠の2人の関係性の構築や心理面での変化と真実を描くシナリオになっているので、原作ファンで原作通りの展開を期待しているひとからは不満の声が出るのは仕方ないのもかしれない。
加えて主人公2人の深堀りもしきれていない部分もあるが、2人の演技の巧さで乗り切った2時間だともいえる。

個人的には漫画原作、小説原作の映画化の場合、

原作者が改変を了承し、
シナリオのオミットやキャラの改変があっても基礎の部分がしっかりと守られていて
原作未読の人が鑑賞しても面白ければOK

というポジションです。

これはMCUなどを観ているひとは自然と受け入れいている部分だと思う。
一例としてスパイダーマンの場合
蜘蛛に噛まれてスーパーパワーを手に入れた少年の物語
という大前提を守りつつも、何度もリブートされて面白い映画が続いている。

というのを踏まえて考えると
夏目アラタが死刑囚の女性と獄中結婚をして、彼女に惹かれていく
というベース部分は非常に大切にしたシナリオなので今作の改変はそれほど気にならなかった。
弁護士のポジションは役者的な変更かもしれませんがね

忘れてはならないのが、佐藤二朗。
佐藤二朗の演技はケレン味たっぷりで過度なまでの佐藤二朗節ではあるので、ある意味安心感ともいえる。

エンディング・オリヴィア・ロドリゴ のヴァンパイアが秀逸で、この映画のための楽曲ではないのか!?と思わせてくれるほどのマッチ。
これは素晴らしかった

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