平安時代に成立した歌物語、伊勢物語で「男=在原業平」はある女性と恋に落ちます。それは、当時権勢を誇った藤原氏の姫君・高子と言われています。
近々天皇の妃となる身で、臣籍降下した業平とは、とても釣り合わない恋でした。

ある晩、業平は高子をおぶって逃げ出し、蔵で雨宿りをしていました。
安全と思われた蔵の奥に姫を休ませて、業平は入口で番をします。

ところが蔵の奥には鬼が隠れており、姫を一口で呑み込んでしまいました。
夜が明けて業平が振り向くと、そこに姫はいません。
泣いて後悔しましたが、後の祭りだったという話があります。

鬼に食われたというのは事実ではなく、高子を屋敷の外に連れ出すのも困難な状況だったといわれていますが、このような物語にされるほど身分違いの恋は切ないものでした。

後に、在原業平は平安時代を代表する歌人となります。
現代では、百人一首で有名な「千早ぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは」の句がよく知られており、タイトルもここから名付けています。

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