詩集シリーズ second season 8 21

「宙に輝く灯に名前を」

何を望んでもどうせ叶わない
諦めて繰り返す日々を絶望と呼んでいた

自分で自分を崖から突き落とすように
突き放して遠い過去に置き去りにするように

自分なのに 自分が敵のような
壁のように立ちはだかっていたような気がする

幸せに生きたい
生きていていいと感じたい
当たり前の日常を当たり前に楽しく過ごしたい

特別でも何でもない願いがどうして遠いのだろう
自分で遠ざけていたことに気づくまでが果てしない旅だった
遠ざけることを辞めて他の誰でもない自分の意志で近づく歩みが遥かな道だった

未来までの距離はまだまだ離れているけど
ずっと歩いてきた時間だけなら 届くくらい積み重ねている

壁だと思っていた自分の影と合わせた手は自分と心の二人三脚

これからも続いていくから未来を信じられそうな気がする

ぼくは確かにかつて絶望していたけど

灯はまだ胸の中でくすぶっている

心が映し出した灯台みたいな星を

希望と呼んだ

詩集 旅

「美しいもの」

美しいものが 善であるとは限らない
恐ろしいものが 美しいこともある

残酷さと美しさは 紙一重で鬩ぎあう
死が見せる 刹那の煌めき

太陽の煌めき
川のせせらぎ

温かな日溜まりも近づきすぎれば身を焼き
川の冷たさも飲み込まれれば溺れてしまう

世界が美しいもので溢れているの
突きつけられた真実に 心が儚さを見る

返答詩集 孤独の星が見た夢

「夜の眠り」

傷ついてばかり 我慢してばかり
いつの間にか 受け取れなくなっていた

心に入れることが 恐くて
無理に入れようとしたら 壊れてしまうかもしれなくて

もやもやした霧みたいに 掴めなくて
夜の眠りのように 言葉にできなくて

胸の中の光が 遠ざかる

分かっていても 追いかけられない
体はうまく動いてくれない 毎日が堂々巡り

泣いて 泣いているような朝日の中で埋もれるように
零してばかりで 零したような夕日のオレンジ色にまみれて笑う

分かってもらえるなら 重さが少しだけ
なくなる気がして

分け合える できない自分のままで
誰にも見えない 夜の中で

祈るような両手を
月明りが包んでいる

月が 抱きしめている

プロローグ

――夜

暗い部屋に風が吹いて
空では雲が流れて
月明りが窓から射し込んでいく

人の訪れることのない書斎だろうか
忘れ去られた図書室だろうか

風とカーテンに光が揺れながら
光は移ろっていく

照らされたのは一冊の本だった

少女は本を手に取る

表紙には何も書かれていない
一頁二頁と捲(めく)ってみる 白紙が続いていた

親指で頁の端を押さえて次々と捲ってみても
最初から最後まで文字らしい文字はどこにもなかった

溜息を吐いて 本を閉じて
手を机に置いた時
手が何かに当たり 転がる音がした
手に取ったのは鉛筆だった

風が吹いた

本が勝手に開く

導くように
誘(いざな)うように

開かれたのは 白紙の一頁

開いた窓の隙間から花片が
ひらり訪れる
月の光に触れて輝く雪のように
零れたら涙のように

手に乗って 零れて
白い世界に舞い降りる

少女は鉛筆をとある頁に奔(はし)らせる
黒い筆跡が白い世界に糸のように紡がれていく

誰かに宛てた手紙だろうか
誰にも知られることのない心の歌だろうか

本当は誰かに知ってほしかったのかもしれない
彼女自身も探しているのかもしれない

心が綴る物語
彼女だけの心の世界

名のなき物語

MAG.MOE - The MAG, The MOE.