ソ連/ロシアの戦争映画の中で、
間違いなく異色と言えるのが『Иди и смотри』

本当にクソみたいな戦争の、クソみたいな映画。これを見ていてハッピーになる瞬間は、ほぼゼロだ。

英雄的勝利もないし、
勇気が報われる展開もない。
全てがうまくいかないし、
頑張ればどうにかなる、みたいな希望も一切ない。

あるのは、
無意味な勇気を持って戦争に参加した子どもが
ただ静かに壊れていく過程だけ。

この映画が作られたのは 1985年。
第二次世界大戦終結から40年という節目の年で、
ソ連では本来「勝利と誇り」を祝う空気が強かった。

なのにこの映画は、
戦争を誇らないし、
祖国も称えないし、
勝ったことすら重要じゃない。

だから企画自体は何年も止められていた。
あまりにも反英雄的すぎたから。
しかし、ペレストロイカの時代が許したのか
、それとも出来が良すぎたためか公開が許された。

上映終了後の観客の反応は沈黙。
感動したとか、泣いたとか、そういう感じじゃない。
どう受け取ればいいか分からない沈黙。
実際に戦争を体験した世代からは
「これは誇張じゃない」
「自分の記憶と同じだ」
という声が出た一方で、
「こんな映画を若者に見せるな」
「希望がなさすぎる」
という批判も当然あった。
でも誰も、
「嘘だ」とは言えなかった。
この映画は
戦争は悲惨だ、と教えてくるわけじゃない。
ただ
見せてくる。淡々と。
だからタイトルは"Иди и смотри" (来て、見ろ。)
戦争そのものを、良い悪いの是非もなくそのまま突きつけてくる映画。

強いて言えば東側版フルメタルジャケット。もっときついけど。

by Patrick_Zenitman

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