武侠小説, by Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki?curid=19377 / CC BY SA 3.0

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武俠小説(ぶきょうしょうせつ)とは、中国文学での大衆小説の一ジャンルで、武術に長け、義理を重んじる人々を主人公とした小説の総称である。
武俠小説における「俠」とは、己の信条に則って正義のために行動しようという精神のあり方であり、そこに手段としての武術、すなわち「武」が加わったものが「武俠」である。
よって、これら2つの要素を兼ね備えた小説が武俠小説ということになるが、実際には武俠小説と呼ばれている作品の全てがこの条件を満たしているわけではなく、武俠小説の定義は極めて曖昧である。
基本的には冒険小説であり、スピーディな展開と武術によるアクション描写が数多い娯楽小説である。
武俠小説は、近世以前の時代を舞台に、武術による闘いを描いた作品が多く、日本の時代小説や任俠小説と多くの共通点を持っている。
小説に留まらず、映画やドラマ、漫画、ゲームなど多様な媒体に進出しており、中華圏の大衆娯楽文化の一翼を担っているほか、早期に翻訳が行われた東南アジアや韓国でも根強い人気を持つ。
内容は多様で、一概に述べるのは難しいが、勧善懲悪や義理を主題とした作品が多く、武術による闘いの他に、冒険、恋愛、復讐、謎解き、伝奇、史実、喜劇など、様々な要素が1つの作品に盛り込まれている。
作品によっては、登場人物は超人的な武術を駆使して闘いを繰り広げることもある。
登場人物にはロビン・フッドのような正義漢や乱暴者、邪悪な戦士などが数多く登場するため、世界観には「暴力が支配する混沌とした世」がうってつけとなる。
日本の剣豪小説のようなアクション小説が戦国の世を舞台にし、「英雄コナン」のようなソード・アンド・ソーサリー小説が架空の古代世界を舞台にするように、武俠小説においても乱世や独裁国家の時代、架空の世界が舞台になることが多い。
宋代から明代、清代にかけての時代を舞台とした作品が多いとされているが、実際は曖昧なことが多く、具体的な時代を設定しない仮想の歴史空間を舞台とした作品も少なくない。
武俠小説は、かつては低俗な大衆小説として、知識人からは馬鹿にされる傾向があった。
だが、深い教養に基づき、明確な歴史観に裏打ちされた金庸、梁羽生、古龍らの作品の登場によって、現在では文学としても高い評価を受けるに至っている。
武俠小説の起源については諸説あり、『荘子』の「説剣篇」や『史記』の「刺客列伝」「游俠列伝」にまで遡るという説、『聶隠娘』や『崑崙奴』などの唐代の伝奇小説や宋代の話本に原型を見る説、あるいは元代から明代にかけて成立した『水滸伝』や『三国志演義』と通じるものがあるとの説など様々である。
だが、現在の武俠小説に直接繋がっているのは、清代末期の「俠義小説」と呼ばれる、儒教的道徳観に基づいて書かれた勧善懲悪の物語とされる。
『児女英雄伝』や『三俠五義』がその代表的作品である。
清代から民国期に移行した1920年代頃より、これら俠義小説の類を基に、道徳的色彩を薄め、武術による闘いや恋愛などの描写を増して娯楽色を強めた小説が書かれるようになり、武俠小説と称されるようになった。
また、それまでの俠義小説の多くは伝統的な講談調で書かれていたが、西欧文化の流入に伴い、武俠小説では近代的な小説話法が取り入れられるようになった。
ジャンルとしても三侠五義のような公案小説(法廷もの)の要素を取り込んだ作品も登場した。
この頃には、『羅刹夫人』の朱貞木、『江湖奇俠伝』の向愷然(平江不肖生)、『鷹爪王』の鄭証因、鶴鉄五部曲(『鶴驚崑崙』、『宝剣金釵』、『剣気珠光』、『臥虎蔵龍』、『鉄騎銀瓶』)の王度廬、『蜀山剣俠伝』の還珠楼主、『荒江女俠』の顧明道など、多数の作家が登場した。
このように1920年代から1940年代にかけて書かれた武俠小説は、1950年代以降に、香港や台湾で書かれるようになった作品とは区分され、「旧武俠小説」と呼ばれる。
第二次世界大戦、国民党と共産党の内戦といった混乱期を迎え、武俠小説は一旦衰退する。
この頃、中華人民共和国の成立に伴って、多くの知識人が香港や台湾に渡り、このことが新武俠小説登場の下地となった。
1954年、マカオで白鶴拳の陳克夫と呉派太極拳の呉公儀の2人の武術家が対戦するという事件が起こり、香港で大変な話題となった。
それに便乗する形で香港の新聞『大公報』の娯楽紙面である『新晩報』に梁羽生による『龍虎闘京華』の連載が始まり、これが「新武俠小説」の幕開けとなる。
3年後には梁羽生の同僚であった金庸も『書剣恩仇録』の連載…

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