昔、佐渡の国府川は長雨で水嵩が増していた。その川のほとりに権七という気の優しいおじいさんが住んでいた。

ある日のこと、権七は薪が残り少なくなったので国府川へ出かけた。権七は上流から流れてきた流木をすくいあげていると、今度はムジナが流されてきた。権七はムジナを助けたが、また今度はマムシが流れてきたのでマムシも助けてあげた。

やがて、人間の男が流されてきた。ムジナは「人間なんか助けたってろくなことがない」と権七は、その言葉に耳を貸さず男を助けてやった。権七はムジナとマムシと男を家に連れて行き、一晩泊めてあげることにした。

だが男は、権七の家の仏壇に置いてあった小銭箱に目をつけていた。皆が寝静まった頃、男は仏壇に置いてあった小銭箱を盗み権七の家を後にした。朝になり、仏壇に置いてあった小銭箱がなくなっていること、助けた男が泥棒と知った権七は愕然とした。

あの小銭箱には、亡くなった妻のお墓を建てるために地道に貯めたお金が入っていたのだ。そんな権七の姿を見たムジナとマムシは、泥棒を懲らしめるために手分けして探し回ると、泥棒が隣村の茶店で酒を飲んているのを見つけた。

怒ったマムシは、泥棒のふくらはぎに咬みついた。泥棒がマムシの毒に痛み苦しんでいる所に、権七がやって来た。権七は、マムシに「男を許してやってほしい」と頼んだ。マムシは毒消しを吐き出し、権七がその毒消しを泥棒のふくらはぎに塗ってあげた。

泥棒の男は自分を許し、助けてくれた権七の寛大さに触れ申し訳ないことをしたと思ったのか盗んだお金を返し、どこかへ逃げてしまった。

この時に使ったマムシの薬が評判を呼び、人々が権七の家にどっと押し寄せた。権七はマムシの薬を作って売り、大金持ちになった。

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