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今回のレジュメ
○伊藤計劃とは何者か
1974 – 2009:享年34歳
作家としての活動期間:2007年 – 2009年
略歴
 武蔵野美術大学美術学部映像学科卒
 Webディレクター
 はてなダイアラー
作品
 長編
 『虐殺器官』『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』『ハーモニー』『屍者の帝国』
 中篇
 『The Indifference Engine』(『虐殺器官』のスピンオフ)
 『From the Nothing, with Love』
受賞暦
 星雲賞(2009年) 故人として受賞
 日本SF大賞(2009年)
 フィリップ・K・ディック記念賞特別賞(2011年)

○粗筋紹介
・『虐殺器官』:2006年第7回小松左京賞最終候補
処女作にはすべてがある。
主人公
ジョン・ポール:大量虐殺を引き起こすを撒く男を負う
冒頭から潜入捜査、軍事車両として再利用される頭文字D「藤原とうふ店」トレノ
テーマ:個人認証による厳格な管理社会を突き進むポスト911な「先進国」と、搾取と内戦と環境破壊が凄まじい「後進国」、キレイに分れた近未来。
痛覚マスキングによる感情操作
「虐殺の器官」を追うFOXHOUNDならぬアメリカ情報軍・特殊検索群I分遣隊のエリートが主人公で、徹頭徹尾、一人称――「語り」に付き合わされる。
「語り」が面白い。自分の感情をつき放して(痛覚マスキング)論理を積み上げる冷静さと、母の半生をうじうじ思い悩むマザコン根性が同居→作者本人
構成:押井守の映画そっくり
大ネタ:「重力の虹」、黒沢清『CURE』、戦争広告代理店

○作風
・一人称
 →ナイーブで心の声が饒舌な主人公
 →読みやすさ:ブログ文体+翻訳文体、黒丸尚(くろま ひさし)「?」「彼」「彼女」の不使用、ルビの多用:DARPA、侵入鞘(イントルード・ポッド)オルタナ(副現実)大災禍(ザ・メイルストロム)
 →「信頼できない語り手」と一人称ならではのメタフィクショナルな仕掛け(全てのテキストは誰かに読まれることを前提にしている)
・膨大なサブカルチャーへのオマージュ:映画、ゲーム、漫画、サンプリング/カットアップ小説、ケビン・ベーコン数)から「初体験リッジモント・ハイ」
「好きとか嫌いとか最初に言い出したのは~」と
・膨大な引用:チェコ『変身』、寺山修司
・外挿法:舞台はSFだがテーマ・問題意識は現在(90年代の生き残り 宇野常寛)
・ある種の切実さ

・『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』
ファンの「あがり」としてのノベライズ
オタコンという語り手
病院での執筆

・『ハーモニー』
ほとんど甲殻機動隊
霧慧 トァン(きりえ トァン)、御冷 ミァハ(みひえ ミァハ)、零下堂 キアン(れいかどう キアン)……これぞ日本SF!(ソゴルケン)
21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。Watche Me
体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成した。→善意に基づく高度医療化社会→テーマ:医療管理社会→自由意志とはなにか?
優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した近代の否定、ミシェル・フーコー
それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機=同時多発自殺に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監査機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。
・「意識」を先天的に持っていない民族→処女作の語りなおし:違い=前作の母とジョン・ポールの融合=トァン(更にタイラー・ダーデン)→21世紀のセカイ系
ポイント:入院中に書いた→プロの病人、CTスキャン
ライトノベルとかケータイ小説に安易に、シンプルな物語に涙しちゃう構造
そのものを皮肉るような仕掛け=etml
種としての人間が生存するために「意識」というソフトウェアを獲得したのであれば、もし生存戦略に「意識」よりも合致した何かを人間が獲得できるとすれば、当然、人間はそちらを選ぶ。選ばなかったもの以外が淘汰され、結果として種として「選んだ」ように見える。『ハーモニー』が描いた意識の消滅とは、すなわちそのような事態だ。「いま集合的無意識を、」の語り手が的確に述べたとおり、人間がテクノロジーによって意識というソフトウェアによらない個体制御装置を手にしたのが『ハーモニー』のエンディングなのだ。

・『屍者の帝国』
スチームパンク、著名なフィクションのキャラクターが登場するパスティーシュ小説でもある。
フランケンシュタイン誕生から約百年後、1879年が舞台、グレート・ウォー
主人公ワトソン、書記「屍者」=労働力→MI6の前身みたいな組織にスカウトされる、局長はM、恩師はセワードとヘルシング教授
屍兵部隊と共にロシア軍を脱走してアフガン北方に「屍者の王国」を築いた男カラマーゾフの動向調査→闇の奥、大里化学:『007は二度死ぬ』スペクターの会社
『ドラキュラ紀元』『エクストラオーディナリージェントルメン』
円城塔との共著、「屍者」=死んだ伊藤計劃、意図的にProject Itohに参加、芥川賞受賞会見でアナウンス

【出演】
Dr.マクガイヤー
「ゲロとレイプがある映画は傑作である」と言い切るアラフォーオタク。 ボンクラ映画をこよなく愛する正体不明の冒険野郎。番組中の白衣は自前だ。
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フリー編集者 しま

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2015年9月29日収録

MAG.MOE - The MAG, The MOE.